かえるのおじさま
「あの子は、いつだってそうさ。自分の本当に欲しいものを、決して手に入れようとはしない。あの我慢強さはむしろ、むかつくんだよ」

強くはき捨てるような座長の言葉に混じっているのは憎しみではない。
むしろ、愛情深い苛立ちだ。

その愛情は美也子の嫉妬心を掻きたてるようなものではなく、むしろ静かな共感となって彼女の奥底までしみこんでゆく。

「あたしはどんな形でもいい、あの子をもう一度舞台に引っ張り上げたかったのさ。それでも、あんたにストリップなんかさせたのは、やりすぎだったかねえ」

「はい。ひどいです」

「はっきり言うねえ、あんたは」

「それでも、なんとなく解ります。あのぐらいしないと、ギャロは私を助けに来ないから」

「ああ、いや……そういうことにしておこうかね」

策を焦ったのは、この娘の愛想尽かしを恐れてだった。

まだ若い娘なのだから、気持ちを受け入れてもくれない『おじさん』など捨てても、次の男は見つかるだろう。

だからドラマチックな恋舞台を演出することによって、ギャロへの想いを強く刷り込んでしまおうと思ってのことだったのだが……侮りすぎたかと、少々反省している。
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