かえるのおじさま
ファンタジーロマンスが好きだと聞いたときは、もっとふわふわとした夢見がちな乙女かと思った。

だが美也子は、ひどく現実的な考えを持つ、しっかりとした娘だ。
文字を覚え、この世界での生活を覚え、ここに根を下ろそうと覚悟もしている。

この娘ならきっと、ギャロの頑固な性根にも付き合ってゆけるだろう。

「本当に申し訳なかったよ……あたしの人を見る目も、まだまだってことだねえ」

「はい?」

「いや、気にしないでおくれ。それより、知りたい事はわかったかい?」

この物語だけを読めば、いかにもひどい母親だ。
自分の母親なら、恨み、顔も見たくないほどに嫌うかもしれない。

だが、ギャロは?

「ギャロが、お母さんや弟たちに会いたいと言った事はありますか?」

「さあ、あたしの覚えている限りじゃ、一度も無いね」

美也子は目を閉じて、母の死を聞いた瞬間の彼を思い出す。
あんな複雑な表情は、今まで見たことも無い。

いや、彼が蛙面だからと言うのではない。

苦しみから解放された安堵と、思慕を寄せる相手を失った落胆。
相反する感情がひとつの顔中でせめぎ合い、瞳は生気を失って宙を泳ぐ。
大きな口は半開きになり、放心を表していた。
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