かえるのおじさま
「弟さんのほうは、どう思っているんだろう?」

「幾度か手紙をもらったけどねえ。『兄さんは元気でいますか』みたいな、あたりさわり無い書面だったよ」

ならば、兄がいることを知らぬわけでは無いだろう。
会いたいと思っているかどうかは別として……。

「せめて弟さんにだけでも会わせてあげたいと思うのは、私のわがままでしょうか」

「さあねえ。それはあの子に聞かなきゃ解らないが、あの頑固者が、素直に本音を言うとは思えないしねえ」

座長はあちこちから寄せ集めた糸を籠にまとめた。

毛糸のかせだけではなく、麻糸の玉や、簡単に縛りまとめた皮ひもなどもある。

「こっちのほうは、これでいいかい?」

「え、あ、はい」

まだ思い悩んでいるのか、美也子は少し上の空で答えた。

その頭を、ぽってりとした両生類の手が優しくなでる。

「あんたのやりたいようにすればいいさね。ギャロの女房はあんたなんだか
ら」

だが、美也子にはまだ、その自信が無い。
自信の裏づけとなる言葉も、行為も無いのだから。

少しうつむいて言葉を失う。
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