かえるのおじさま
そんな彼女の頭を、座長はさらに強く、ぐしゃぐしゃと撫で回した。

「もっと自信をもちなよ。あの子は本当に欲しい物を手に入れようとしない、って言っただろ? つまり、そういうことさ」

膝に座っていた幼子が、ちいさな瞳で美也子を見上げる。

「ミャコせんせー、ちゃんとお嫁さんしたんだから、ジシンもってね」

「ありがとう」

二人の言うとおりだ。
もう少しだけ自信を持ってみよう、と美也子は自分の手のひらを見つめる。

ここに彼の指が絡みついた。
指の間を確かめるように強く、優しく、肩が触れ合うほど近く手をつないで歩いた。
少なくとも心はゆっくりと近づいている。

それに、夫婦の誓い事までしておきながら手も出してこないのは、もしかして『本当に欲しいもの』だと思ってくれているから? 

美也子は喜びに震える指先を胸の前に強く押し当てて、高鳴る自分の鼓動を聞いていた。
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