可愛い生徒(カノジョ)の育て方
 お母さんは、酒も飲んでいないのにやたらと上機嫌で俺に絡んできた。

「先生、菫のどこに惚れました?」

 さすが、安西のお母さん。このご家族の辞書に『婉曲』という文字はないのだろうか……。

 いや、きっとあのお姉さんは上手に婉曲な表現を使いつつ、デパートという女の園でしたたかに勤務されているだろう。
 
「全部です」

 開き直って堂々と答えた。

「まぁ……ありがたい! こんなに素敵な息子が出来たら、私も嬉しい!!」

「うちは男の子がいなかったからなぁ。私も本当は息子と酒を酌み交わすのが、密かな夢で……」

 なんだか、妙なテンションで盛り上がってきたぞ……。

 根掘り葉掘り、お母さんから色々質問を受けた。多分、安西の好奇心はお母さん譲りだな。

 お父さんはそれをにこにこと聞いているのが多かった。

 うちとは反対だ。

 親父の方がよく喋った。お袋はそれをにこにこと聞いていたっけ。

 まぁ、俺も仕事柄よく喋るけど。
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