可愛い生徒(カノジョ)の育て方
 ……そして翌日の午後。

 安西は後部座席で、俺のCDを物色中。

「……知ってる曲、ないよ」

「悪いけど、邦楽はあまり聴かない」

「……せめて日本人を一人くらい置いてください」

 日本人か……。

 久保田利伸か平井堅あたりしか聴かない、ちょっと偏った趣味だけどいいか?

「……わかった。とりあえず、今はこれでも聴いとけ」

 俺の中では、お前のテーマ曲なんだよな、これ。

 ダイアナ・ロスの甘い声が何となく似ている気がするし。

「どっか行きたいところ、あるのか?」

「ううん。特にないよ。だって、誰かに見つかったら困るでしょ?」

 まぁ、な。

「……確認しておきたいんだけどさ、安西は教員免許取るのか?」

「教員免許? うん、取りたいと思うよ」

「そうか。じゃあ、見つからないほうがいいな。教育実習にうちの高校へ戻って来るだろ?」

「出来ればそうしたいけど」

「それまでは内緒だ」

「……はい」

 頭のなかで素早く計算する。

 安西の担任は退職した。俺が1年の担任になれば、もしかしたら……。
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