可愛い生徒(カノジョ)の育て方
「嫌、なのか?」

 これからの事に不安を感じているのだろうか。

 無理強いするつもりはない。

 今は、まだ。

 これまでの事を考えたら、彼女がここにいるだけでも十分なのだから。

 腕の中で固まっていた彼女が、静かに動いた。

 華奢な腕が、ゆっくりと俺の背中に回される。

 彼女は首を振って、小さな声で教えてくれた。

「嫌じゃないよ。名前、呼んでもらえたのが嬉しくて」

 泣き笑いしながら、俺の胸に額をくっつけている。

「ここって現実の世界!?
 先生が私を好きになってくれたのも、はぐはぐしてくれているのも、全部私の勝手な妄想だったりして」

「は?」

 つい、間の抜けた声が出た。

「だって、私の妄想の世界でしかあり得ないって思ってたもん。
 はぐはぐされるのも、名前を呼ばれるのも、それから……仲良しになるのも」

 涙をぽろりとこぼしながら、くすくす笑って照れている。

 ころころ変わる表情に潜む不安が彼女を饒舌にしているのだろう。
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