可愛い生徒(カノジョ)の育て方
「……というのは冗談。ま、ちょこっと買い物だけはさせてもらいたいけど、ここはついで、だよ」

 まだ目的がわからないらしく、きょろきょろとパン型ヒーローの店を眺めている。

「この隣。無農薬の美味しいジャムを手作りさせてもらえるんだ。こういうの、好きだろ?」

 パン型ヒーローのお店のすぐ横に、手作りジャムの工房がある。

 まだ姪が生まれる前、ここへ甥を連れて来たことがあった。

 口の周りをべたべたにして、ジャムの試食をしたがる甥を制止するのが大変だったっけ。

 雪解けでぬかるんだ砂利道を、手を繋いで支えて一緒に歩く。

 工房へ近づくと、甘い匂いが漂ってきた。
 
「先生、よく私の好みが解ったね!」

「今朝、うちの冷蔵庫にバターしかないってぶーぶー言ってたよな。
 ちょうどジャムを切らしてたし、ここで菫の好きなジャムを作って持って帰ろう」

「先生、ありがとう!」

 喜んでもらえて光栄だ。

 俺たちのデートは、どうしても人目を忍んで、行く場所も限定されてしまうけれど。

 きっと、どこへ行っても楽しめると思った。
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