水没ワンダーランド

ガクンと身体が前に投げ出される感覚。

なんとか手をバタつかせてバランスを取ろうとするも、上手くいかない。



丘を下る途中、何かにつまずいたのだ、と那智が認識したころにはもう遅かった。




「う…あ……あああぁああぁぁあ!?」




那智は頭から地面に倒れこみ、そのまま坂を転がり落ちる。


痛烈な叫びを上げ、二度三度身体を回転させたところで、やっと体が止まった。


那智は草の中で死んだようにうつぶせる。

地面に打ち付けられた体中あちこちが痛んだ。


「いっ……痛……」


半泣きになりながら、那智は起き上がる。
そして今、自分が転げ落ちてきた丘を睨んだ。


(あー…くそっ!!誰だよあんなとこに岩なんか置いたやつ!!)


しかしここで、那智はある一つの違和感を感じていた。
――岩にしては、なんだか感触が柔らかかったような……。



那智は痛む足を引きずって、丘を登り始める。
丘に一筋、那智が転がったせいで草の緑色が削れ、土がむき出しになり道のようになっている。

その道が途切れているところ、つまり、那智が何かにつまずいた場所にたどりついたとき。


那智は固まった。



「……岩じゃ、ない……」



女の子だ。

女の子が丘の途中、草に隠れるようにしてうずくまっていた。


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