水没ワンダーランド
故意ではないとは言え、女の子を蹴り飛ばしてしまったという罪悪感にとらわれるが、すぐに那智は我に返った。


「おい、大丈夫か!?」


慌ててしゃがみ、女の子の肩を揺さぶる。

ピクリともしない彼女を見て、那智は焦る。


(まさか……俺が蹴ったせいで…)

サアと血の気が引く感覚がしたが、耳を澄ませてみると



スウ――…スウ……という心地良さそうな吐息が聞こえた。



「……っ寝てんのかよ!」


拍子抜けして思わず突っ込みを入れる。那智の声に、女の子の肩がびくりと震えた。



重たそうに、ゆっくりとまぶたが開かれる。



「……あ……?」



女の子が、眠りから覚めた。


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