水没ワンダーランド
少女は、これ以上ないぐらいに目を見開く。
金色の目は恐ろしいほど鋭く血走っていて。
狂喜に、満ちていた。
「そんな…ほんとうに?」
誰もいないはずなのに、
誰かと会話しているかのように少女は何度も頷き返事をする。
「そんな、そんな、そんな!大変だわ!」
少女はリボンのたくさんついたピンク色のドレスの裾をつまみ、部屋の出口へと駆け出す。
まるで、
自分の誕生日会に招待した友人を
待ちわびる 子供のような無邪気な表情をして。
「久しぶりのお客様よ!」
嬉々として高らかに叫び、少女は廊下へと飛び出していった。
反動に任せて勢いよく扉が閉まったとき、ドアにかけていたルームプレートがカタカタと鳴る。
銀を使って作られた豪勢なそれには、
ホイップクリームを絞ったような可愛い浮き文字で、
こう書かれていた。
「サラ・フローレンスの寝室」
このフローレンス邸の主人その人だった。