水没ワンダーランド

少女は、これ以上ないぐらいに目を見開く。


金色の目は恐ろしいほど鋭く血走っていて。





狂喜に、満ちていた。




「そんな…ほんとうに?」



誰もいないはずなのに、
誰かと会話しているかのように少女は何度も頷き返事をする。



「そんな、そんな、そんな!大変だわ!」



少女はリボンのたくさんついたピンク色のドレスの裾をつまみ、部屋の出口へと駆け出す。



まるで、
自分の誕生日会に招待した友人を
待ちわびる 子供のような無邪気な表情をして。



「久しぶりのお客様よ!」


嬉々として高らかに叫び、少女は廊下へと飛び出していった。



反動に任せて勢いよく扉が閉まったとき、ドアにかけていたルームプレートがカタカタと鳴る。



銀を使って作られた豪勢なそれには、

ホイップクリームを絞ったような可愛い浮き文字で、

こう書かれていた。




「サラ・フローレンスの寝室」




このフローレンス邸の主人その人だった。



< 85 / 87 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop