社内恋愛のススメ
主任という立場にある上条さんは、他の人よりも必然的に仕事量が多くなる。
何の役職もない平社員の私よりも、書類は山積みになっているはず。
いつになるかなんて、分からない。
そもそも、来てくれるかどうかすら分からない。
私がこうして待っている間も、上条さんは仕事をしているのだろう。
そんな仕事熱心な部分にも、私は惹かれていたのだ。
懸命に仕事に立ち向かう、その背中を好きになった。
だから、待ちたい。
どんなに遅くなっても、上条さんのことを待っていたい。
いつまでも待っていたいのだ。
上条さんのことを。
時計の針は、虚しく音を刻み込んでいく。
他には、誰もお客さんはいない。
静か過ぎるこの空間は、時計の音をより大きく響かせる。
いつの間にか、1人ぼっち。
来たばかりの頃にいた数人のお客さんは、消えていて。
店の隅に、ポツンと取り残されてしまった私。
時計の針がグルリと一回りする頃、ようやく彼は現れた。
カラン。
カラン、コロン。
私が入って来た時よりも大きな音を立てて、古びたドアが勢い良く開かれる。
その音に、敏感に反応してしまった私。
パッと顔を上げると、上条さんの姿が入り口付近に小さく見えた。
「いらっしゃいませ。こちらへどうぞ。」
マスターが私と同じ様に、上条さんを私とは別の席へと案内しようとする。
私から離れた席へと案内するマスターを、上条さんが片手で制した。
「………待ち合わせなので。」
そう言って、上条さんは足早に私の元へと駆け寄る。
会社で見た時と同じスーツ姿の上条さんの額には、うっすら汗が滲んでいた。