社内恋愛のススメ
「婚約………するんですか?」
「………。」
「あの人と、彼女と………結婚するんですか?」
そう聞いた私に返ってきたのは、上条さんの困った顔。
婚約するということは、その先には結婚という未来が控えているということ。
これから先の長い人生を、ともに過ごしていくと誓い合うということ。
私じゃない、あの人と。
「小倉社長の会社とは、取引がある。それも、うちの会社ではかなりの規模になる額を、取引しているんだ。」
「それは、知ってます………。」
「無下に断れない。何も考えずに適当に断れば、会社に莫大な損害を与えることになる………。」
事の深刻さを物語る様に、上条さんが頭を抱える。
きっと今日まで、上条さんは悩んできたんだ。
会社と、プライベート。
文香さんと私の間で、板挟みになって。
いつもは冷静な上条さんを追い詰めているのは、誰なのだろう。
彼女?
それとも、私?
私の方なのかもしれない。
上条さんの未来に必要ないのは、きっと私の方だ。
文香さんは、小倉社長の娘。
立派な人のお嬢さん。
文香さんとの結婚は、上条さんの為になる。
小倉社長の跡を継いで、会社を大きくすることも出来る。
このまま、うちの会社に残ったとしても、上条さんの存在は会社の利益になる。
飛躍して、主任という枠になんか収まらない人になるだろう。
それに見合うだけの実力も、上条さんには備わっている。