社内恋愛のススメ



「婚約………するんですか?」

「………。」

「あの人と、彼女と………結婚するんですか?」


そう聞いた私に返ってきたのは、上条さんの困った顔。



婚約するということは、その先には結婚という未来が控えているということ。

これから先の長い人生を、ともに過ごしていくと誓い合うということ。


私じゃない、あの人と。



「小倉社長の会社とは、取引がある。それも、うちの会社ではかなりの規模になる額を、取引しているんだ。」

「それは、知ってます………。」

「無下に断れない。何も考えずに適当に断れば、会社に莫大な損害を与えることになる………。」


事の深刻さを物語る様に、上条さんが頭を抱える。



きっと今日まで、上条さんは悩んできたんだ。


会社と、プライベート。

文香さんと私の間で、板挟みになって。



いつもは冷静な上条さんを追い詰めているのは、誰なのだろう。


彼女?

それとも、私?


私の方なのかもしれない。



上条さんの未来に必要ないのは、きっと私の方だ。


文香さんは、小倉社長の娘。

立派な人のお嬢さん。

文香さんとの結婚は、上条さんの為になる。



小倉社長の跡を継いで、会社を大きくすることも出来る。

このまま、うちの会社に残ったとしても、上条さんの存在は会社の利益になる。


飛躍して、主任という枠になんか収まらない人になるだろう。



それに見合うだけの実力も、上条さんには備わっている。



< 129 / 464 >

この作品をシェア

pagetop