社内恋愛のススメ



「ん?何か、有沢………顔、赤くない?」

「………!!」

「また、熱でもあるの?」


長友くんはそう言って、私のおでこに触ろうとする。

私は咄嗟に椅子を引いて、長友くんの手から逃げてしまった。



「ね、ね、熱なんかないし!」

「本当かよ………。」

「ほんと、ほんと!ほら、この通り、元気だから。」


心配してくれるのは、ありがたい。


だけど、その前に聞き逃してはいけないことを、長友くんは言っている。


確かに、その口で。

私を心配してくれたはずの、その口で。



独り身って、そう言った。

聞き間違いでなければ。


独り身。

その言葉は、私にだけ適用されるべき言葉ではない。



独身なのは、長友くんだって同じ。


ムッとした私は、缶コーヒーだけは頂きつつ、しっかり反論しておいた。



「長友くん、また余計なこと言ったでしょ。」

「余計なことって?俺、何も言ってないけど。」

「独り身って、それは長友くんも一緒だから!それに、私は別に、結婚しなくても平気だもん。」


私のこの言葉は、本音も含まれている。

見栄を張って、そう言った訳じゃない。



結婚したくない訳じゃないけれど、どうしても結婚したいという訳でもない。

そこまでして、結婚したいとは思ってない。


こんなこと、実家の両親や紗織に言ったら、怒られるだろうけれど。



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