社内恋愛のススメ



「へぇー。」


短い言葉しか、返せない。

聞けない。


誰?

そんなこと、長友くんに聞けないよ。



知っている人だったら、どうするんだろう。

もし、その人が………私の知っている人だったなら。


長友くんの隣に立つ、長友くんが結婚したいと思っている人。


ちょっと思い浮かべただけなのに、千切れそうなくらいに胸が痛んだ。



「ま、相手が全然考えてくれなさそうだから、まだまだ先だけどな。」


笑いながらそう言って、長友くんはパソコンへと向き直る。



その笑みが、どことなく切なげで。

ほんの少し、寂しそうで。


長友くんの横顔が、窓から入り込んだ夕焼けの色に染まっていく。

鮮やかなオレンジに染め上げられていく。


そんな長友くんの横顔に、私はついつい魅入ってしまっていた。







「よーし、もうちょっとだ!」


隣のデスクから聞こえる、低い声。

そちらに視線を向ければ、長友くんが椅子に座ったまま、大きく背伸びをしているのが見える。



時刻は、午後7時。

いくら夏だとは言っても、いつまでも日が昇っている訳ではない。


すっかり日は沈み、オフィス街も闇に包まれる時間。



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