社内恋愛のススメ
暗くなりそうな心を払いたくて、私は明るくこう誘う。
「長友くん、砂浜まで下りてみようよ!」
私のその言葉に、長友くんがにんまりと笑う。
やんちゃ盛りの子供。
悪戯好きな子供みたいな、そんな笑顔。
長友くんの、その笑顔が好き。
影のない、その明るさが好き。
同僚として。
友達として。
人間として、好きなんだ。
「おー、いいね!」
そう言った直後、長友くんが走り出す。
私よりも早く、ずっとずっと早く。
長友くんは我先にと、砂浜に突撃していってしまった。
「海だーーー!」
長友くんが叫びながら、波打ち際に駆け出していくのが見える。
全力で。
もしかすると、仕事よりも真面目に走っているのかもしれない。
ポーンと、履いていた革靴と靴下が宙を舞う。
「ぷっ………、あははっ!」
私は、そんな長友くんを見て笑ってる。
長友くんの車の中で、こっそりストッキングだけを脱いで。
素足にパンプスを履いて、砂の上を歩く。
ザク。
ザクッ、ザクッ。
砂を踏む音。
あぁ、信じられない。
ほんの1時間前まで、会社の中にいたなんて信じられなくなる。
砂の中に埋もれていくパンプスが鬱陶しくて、私も長友くんの真似をしてみた。
ポーンと、パンプスが飛ぶ。
私の真っ黒なパンプスが、空を飛ぶ。
何か、いい。
すごく気持ちいい。
ふふっ、今日は平日なのにね。
会社に戻れば、仕事が待っているのにね。