社内恋愛のススメ



一通り遊んだらしい長友くんが、私の隣に腰を下ろす。


鼻につく、潮の香り。

独特の匂いが、フワッと鼻孔の奥にまで入り込む。



私は砂が纏わり付くのも気にせず、砂の上に寝転ぶ。


そんな私を、長友くんが上から見下ろしていた。



青い空。

澄んだ空をそのまま写しているかの様な、海の色。


たまに吹く強い海風が、熱気をさらっていってくれる。



視界の端を飛ぶ、真っ白なカモメ。


ここは現実なのに、どこか非現実的な場所。

非現実的な空間。



「あー、いい気分。仕事に戻らなきゃならないの、忘れちゃうくらい!」

「俺も一瞬、仕事のこと、忘れてた。」


長友くんが、そう言う。



私と同じこと、考えてたんだ。

同じことを感じてたんだ。


小さなことを、嬉しく思う。



「なぁ、有沢。」

「なーに?」

「息抜きになったか?」

「………うん。」



長友くんは、私の為にここに来たのだろうか。


狭い会議室で、付き合っていた人と向き合わなければならない私の為に。

自分の為ではなく、私の為に。


そんな気がする。



「長友くん、もしかして………私の為にここに?」


私が素直にそう聞いてみれば、長友くんは逆に素直じゃない答えを返す。



「自惚れんな、バーカ。」

「そうだよね………。」


見上げると、すぐ真上に長友くんの顔。

長友くんの向こうに見える空が、薄い青に染まる。


空と太陽を遮り、長友くんの大きな影が私に落ちた。



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