社内恋愛のススメ



「クリスマス、かぁ………。」


長友くんがここに連れて来てくれたのは、息抜きの為。


ずっと息抜きばかりをしている訳にもいかない。

息抜きが終わったら、仕事が待っている。


仕事のことを考えなければならない。



頭の中に思い浮かべた、クリスマス。


目を閉じて、真っ先に浮かんだのは恋人。



灰色の空。

空に舞う雪。


白に染まる街を歩く、恋人達。



幸せそうに寄り添う2人。


そのうちの1人は、長友くんで。

もう1人は、私の知らない女の人。


2人が笑いながら、雪が舞う街を歩いている。



私は遠く離れた所から、2人を見ているだけ。


想像しただけなのに、胸が痛む。

ズキンと、胸に切り傷を付けられているみたいに。



私が、胸を痛める理由なんてない。

何の関係もない。


そうであるはずなのに、胸の痛みだけは増していく。



どうして。

どうして。


そんなの、おかしいよ。



私と長友くんは、同僚。

私と長友くんは、同期。


ただの同僚が、ただの同期が胸を痛める必要なんて、どこにもないじゃない。



まさか、まさか………私は。






「クリスマスとか言っても、私………しばらくクリスマスに彼氏がいた記憶がないから、分かんないや。」


想像しただけで、動揺してしまう。


長友くんと、その人。

長友くんが結婚したいと思っている、名前も顔も知らない誰か。


そんな自分を隠す為に、誤魔化しつつ笑う。



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