社内恋愛のススメ
「主任が有沢を呼び出すなんて、こんなことだろうと思った………。」
ボソッと、長友くんがそう吐き捨てる。
その言葉で、長友くんの行動が決して偶然ではなかったのだと知る。
長友くんは気付いていた。
長友くんだけが気付いてくれていた。
私が出していた、小さな心の叫び。
私のSOSを、長友くんだけは分かってくれていたのだ。
他の人は、誰も分からなくても。
気が付かなくても、長友くんだけは分かってくれていた。
「別れたのに、しつこく付き纏って。………恥ずかしくないんですか?」
笑いながら、長友くんがそう言う。
笑顔なのに、言葉だけは攻撃的なのが印象に残って。
長友くんの攻撃的な言葉に、上条さんが即座に反応する。
上条さんの顔は、私からは見えない。
上条さんから見えない様に、長友くんが私を背中で隠してくれているから。
上条さんの顔は見えないけれど、分かる。
分かってしまう。
きっと怒ってる。
すごく怒ってる。
上条さんの怒りが、空気を通して私にまで伝わってくるのだ。
顔が見えなくても、空気だけで伝わってしまうのだ。
「部外者には、黙っていてもらおうか。これは、僕と有沢さんの問題だ。君には、何の関係もないだろう。」
上条さんは、もう私を実和とは呼ばない。
わざと有沢さんと言い直し、長友くんには関係ないのだと言い放つ。
醒めた声。
醒めた言葉。
冷たくて、分からなくなる。
読み取れなくなる。
何を考えているのか。
何を思っているのか。
いつも、そうだ。