社内恋愛のススメ



(長友くんが、私のことを………好き?)


あんなに、女扱いされていなかったのに。

男友達に接するみたいに、普通に話していたのに。


そんな私のことを、長友くんは好きなの?



ヤバい。

思考回路がパンクしそう。


長友くんは、どんな顔で言ったの?

そんなことを、どんな顔をして言ったの?


何を思って、そんな言葉を口にしたのだろうか。



(分かんないよ………、長友くんのことが。)


考えれば考えるほど、分からなくなる。

分からないから、また考えてしまう。


同じことの繰り返しだ。



分からない。

分からないよ。


長友くんのことが。

長友くんの気持ちが。


今までで、1番長友くんのことが分からない。



「………。」

「ほら、行くぞ。」


呆然とする私の手を引いて、長友くんが会議室を立ち去る。


そんな私と長友くんの姿を、上条さんが苦虫を噛み潰した様な顔で見送っているのが見えた。







長友くんに手を引かれ、一気にフロアを突き抜けていく。


夕焼けに染まる時間が足早に通り過ぎて、日が沈む。

訪れたのは、夜の闇。

世界を覆い尽くすほどの、漆黒の闇。



日も沈み、暗くなった社内に残る人は、そう多くない。

上条さんに捕まっている間に、とうに就業時間は終わってしまっていたらしい。


人の少ない廊下を、長友くんは真っ直ぐに歩いていく。



非常灯が照らす廊下は薄暗く、どこか頼りない。

ほんのり緑色に染まる廊下を、長友くんと2人で歩く。


触れた手は離れない。

ずっと、手を引かれたまま。



長友くんが足を止めたのは、廊下の端。

給湯室の前。



「………、ちょっと!」


狭い給湯室に私を押し込むと、長友くんもスッと忍び込む様に、給湯室の中に足を踏み入れた。



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