社内恋愛のススメ



目を開けて、真っ先に見えた長友くんの顔。


誰よりも、大切な人。

ずっとずっと、私を影から見守ってくれていた人。



同僚から彼氏になった長友くんが、目の前にいる。

しっかり目を開いて、じっと私を見つめる2つの瞳。


どうやら、私よりも先に起きていたらしい。



ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべて、長友くんが言った。



「おはよー、有沢。」

「おはよ………。」


あぁ、恥ずかしい。

面と向かって話すことでさえ、照れてしまう。


こうしている今でさえ、布団の中では裸のまま。

生まれたままの姿なのだ。



擦れるシーツの感覚と、たまに感じる布越しの体温。

照れるなと言う方が、無理だ。


真っ赤になって、布団に潜り込もうとする私。

そんな私に、長友くんはこう告げたのだ。



「なぁ、1つ言ってもいいか?」

「な、何?」

「………お前、化粧ハゲてるぞ。」

「は?」


この男は、本当に私の彼氏なのでしょうか。

私の恋人なのでしょうか。



(このバカ………!)


世の中には、言っていいことと悪いことっつーもんがあるでしょうが。

27歳にもなって、そんなことも分からんのか。


仮にも、彼氏なのに。

まだ数時間しか経っていないとは言え、一応、私は彼女であるはずなのに。



長友くん。


いや、『くん』なんていらない。

この長友め。




「………っ、だったら見るな!」


見なくても、結構。

むしろ、寝起きの顔なんて見て欲しくもない。


汚い寝顔をじっくり見てるなんて、どれだけ悪趣味なんだ。



「いいじゃん。別に、減るもんじゃないんだし。」

「減るものじゃなくても、寝起きの顔なんて見ないでよ!」

「化粧がハゲた有沢の寝顔は、しっかりと拝ませてもらったぜ。」


したり顔で、長友くんは笑う。



憎らしい。

軽く殺気を覚えてしまうほど、自分の彼氏が憎らしくて仕方ない。


それでも、この男が好きだ。

このバカが好きで好きで、しょうがない。


そう思ってる私も、どうかしちゃってるけど。



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