社内恋愛のススメ
都会の一角にある、モダンな建造物。
まるで、別世界。
そこだけを見たら、写真集の中にでも迷い込んでしまったのかと、勘違いしてしまいそうな空間。
ステンドグラスが、鮮やかに建物を彩る。
三角形の屋根。
その先には、十字架。
石造りの壁に、階段。
ステンドグラスに反射した光が、教会内を様々な色に煌めかせる。
深海の青。
鮮やかな黄色。
血の様な、目の冴える赤。
光が折り重なって、また別の色を生み出していく。
たくさんの色に溢れる教会の中に佇む、1人の長身の男性。
真っ白な背中を、じっと見つめる。
この教会の中にいる人は皆、その男性に視線を向けていた。
真っ白なタキシードに身を包むその人は、私のよく知る人。
スッと伸びた、長い足。
漆黒の闇を表すかの様な黒髪は、綺麗に後ろに流されて固められている。
いつもとは少し違う髪型が、その人を更に大人の男性へと見せているのだ。
目元をより引き締める、縁のある眼鏡。
その表情は、私が座る位置から見ることが叶わない。
真っ赤な絨毯の先にいる人。
その人は、上条さん。
私が、ずっと憧れていた人。
想いが届いたのに、簡単に別の人を選んだ人。
他の人との結婚を決めているのに、私を縛ろうとしていたあの人。
上条さんの後ろ姿を、教会の端から見つめる。