社内恋愛のススメ



私は、1人じゃない。

たった1人で、あの人の式に参列する訳じゃない。


長友くんがいる。

他の企画部のメンバーがいる。



私は、1人じゃないんだ。


長友くんが隣にいてくれるなら、平気。

平気だ。


頑張れるよ。

長友くんが、私の手を握っていてくれるのなら。







そう思って、迎えた当日。


私の隣は、いつでも長友くんの場所。

彼氏になった今も、同僚でしかなかった昔も、隣にいたのは同じ人間。


今日もまた、私の隣には長友くんが座っている。



シックな黒のスーツ。

薄いグレーのシャツに、光沢のある紫色のネクタイ。

ネクタイには、キラリと光るシルバーのネクタイピン。


仕事用のビジネススーツよりも、フォーマルな装いの彼は、私が選んだ人。


いつもとは雰囲気の違う長友くんを視界に入れただけで、鼓動が跳ねる。



トクン。


優しく、優しく。

私の心臓を締め付ける痛みが、やけに心地いい。



トクン、トクン。


この痛みは、嫌いじゃない。

嫌いになれない。


そう。

まるで、砂糖菓子みたいに甘いから。



普段着ているスーツと、ちょっと違うだけなのに。

締めているネクタイの色が、ほんの少し別の色というだけなのに。


どうして。



どうして、こんなに胸を高鳴るのだろう。

どうして、こんなにときめいてしまうのだろう。


また、新たな長友くんの一面を知った気になる。



知る度に、長友くんに惹かれていく。

更に、長友くんの心が欲しくなる。


もっと、もっと。

長友くんのことが知りたいと思ってしまう。



< 270 / 464 >

この作品をシェア

pagetop