社内恋愛のススメ
「あのバカ………。」
出てきた3人は、ミニスカート姿。
筋肉質な男が揃って、女装している。
チェックの制服風の衣装に、セーラー服。
それと、ピンク色のナース服。
考えたのは誰なのかなんて、言われなくても分かる。
バカだ。
あの男はバカだ。
上司の結婚式に、余興とは言え、コスプレしてくるなんて。
(知ーらない。後でどうなっても、庇ってやんないから。)
細身の男がやるならまだしも、どう見ても細いとは言えない男達がやる女装は見るに耐えない。
「こら、長友!佐々木!木村!」
「はい!」
「お前達は、一体何をやってるんだ!?」
終わった後に部長から、会場の隅でお説教されていたのは見なかったことにしておこう。
(自業自得だ………。)
バカだなぁ、なんて笑ってみたりして。
他の人の余興もなかなか凝っていて、乗り気になって手拍子をしてしまった。
盛り上がった披露宴は、意外と楽しめてる。
「改めまして、新婦の入場です。」
2回目のお色直しの後、文香さんが身に纏っていたのは、色打ち掛け。
金色の刺繍が施された打ち掛けは、思わず見とれてしまうほど美しい。
「あの着物はね、小倉の家に代々伝わる着物なのよ。」
「そうなの?」
「文香さんのお母様も、あの打ち掛けを着ていたのよ。いつ見ても、綺麗ね。」
会場のどこかで、誰かがそんなことを言っていた。
「………。」
綺麗だ。
結婚情報誌に出てもおかしくないほど、美しい花嫁さん。
モデルみたいな彼女に、目を奪われる。
あんな風になりたい。
ライバルだった人に、そう思ってしまうのはおかしいのだろうか。
たまに俯く私に気付いて、長友くんがテーブルの下で、ギュッと手を握ってくれる。
「有沢、どうした?」
気持ち悪い女装から着替えた長友くんが、心配そうに私を見つめる。
結婚。
結婚って、どんな感じなのだろう。
誰かと未来を誓うって、どんな感じなのだろう。
もしも、私にもその時が来るなら、相手は長友くんがいい。