社内恋愛のススメ



この先、どうなるかなんて分からない。

何年か先の未来で、隣に誰がいるのかなんて、今の私には知り得ないこと。


だけど、もしそんな日が来るのなら。

誰かと未来を誓うことになるのなら、その相手は長友くんがいいんだ。


長友くんじゃなきゃ、考えられない。



「………っ、何でもない!」

「泣いてる………?」

「も、もらい泣き………してるだけ。」


自分の結婚式でもないのに、涙腺が緩みっぱなしだ。



あーあ、きっとぐちゃぐちゃ。

張り切ったメイクも、涙でボロボロになってるはず。


披露宴が終わった後、私はすぐに控え室に駆け込む羽目になってしまった。




「おーい、有沢さーん。顔が酷いことになってますよー。」

「う、うるさい!女装してた長友くんには、何も言われたくない。」


思い出しても、笑える。

長友くんと他の2人の女装姿。


記憶からなくせと言われても、絶対に無理だから。



「長友くんは、外で待ってて。着替えて化粧を直したら、すぐに行くから!」

「おー、そうしてくれ。その顔、ちゃんと直してこいよ。」

「………行ってきます。」


長友くんにそう言い残して、控え室がある廊下の奥へと走り出す。


その先に、誰が待ち受けているとも知らずに。







「はぁ………。」


やってしまった。


こんなに泣くつもりなんてなかったのに、泣いてしまった。

どうして、こんなにも泣いてしまったのだろう。



両親に送った文香さんの言葉に、感動したのだろうか。

それとも、自分の未来をあの2人に、投影して見ていたのだろうか。


文香さんを、自分に。

上条さんを、長友くんに。



頭のどこかで置き換えて、あの2人を見ていたのだろうか。


分からない。

分からないけれど、不思議と嫌な気分ではなかった。



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