社内恋愛のススメ
会社は、世間体を気にしてる。
評判が悪くなることを恐れている。
他人の目を気にしているのだ。
このご時世。
就職先を新たに探す手間が省けただけ、幸運なのだと思うべきなのかもしれない。
辞めようと思ってた。
長友くんの前からいなくなる。
上条さんと文香さんの前からいなくなる。
みんなの前から消える。
それがいいことなのだと、そう考えていた。
辞めることも許されない。
でも、この場所から離れられればいい。
どこだっていいんだ。
あの2人と、長友くんと上条さんから離れることが出来るのならば、場所なんてどこでもいい。
この地球上のどこでだって、生きていける。
(………。)
一瞬浮かんだのは、あの2人の顔だった。
悲しそうな、長友くんの顔。
酷く歪んだ、上条さんの顔。
最後に見た、あの2人の顔。
それは、笑顔ではなかった。
こんな時に思い出すのが、笑顔ではないなんて。
笑った顔さえ、すぐに思い出せないなんて。
これも、罰なのだろうか。
長友くんを裏切った罰。
上条さんの気持ちを受け入れようともしなかった罰。
そして、文香さんを傷付けてしまった罰。
浮かんでしまった2人の顔を振り払いたくて、何度も頭を振る。
その時だった。
背後から、声が聞こえたのはーー……
「有沢………。」
私を呼ぶ、長友くんの声。
大好きな人の声。
声を聞いただけで分かったよ。
これは、長友くんの声なんだって。
私が1番会いたかった人の声なんだって。