社内恋愛のススメ
「残された俺の気持ち、お前は考えたこと………ある?」
「長友くん………?」
「俺がどんな気持ちで、この1年を過ごしてきたか………有沢に分かる?」
長友くんの言葉に、体が勝手に反応する。
長友くんの気持ち。
私に残された後の、長友の気持ち。
考えたことがなかった訳がない。
いつも考えていたよ。
別れを告げる前から、ずっと。
(憎んでいるんじゃないの?)
嫌いになったんじゃないの?
自分と付き合っているのに、別の男に抱かれて。
その男は、自分もよく知っている人間で。
別れた昔の男に、簡単に足を開く女。
そんな女、誰だって嫌なはず。
付き合い続けたい。
それでも一緒にいたいだなんて、思わないはず。
恋人に置いていかれた側の長友くんの気持ち。
別れを告げられた側の長友くんの気持ち。
裏切られた長友くんの気持ちが、それ以外にあるのだろうか。
長友くんの顔が歪む。
微かに潤んだ目元が、涙で霞む視界に映り込む。
長友くんが、この1年、どんな思いでいたのか。
どんな思いで、あの場に残って仕事を続けてきたのか。
私は知らなければならない。
長友くんを傷付けた人間として、知らなければならないのだ。
「後悔した………。」
長友くんの口から出たのは、長友くんらしからぬ言葉。
いつも真っ直ぐで前向きな長友くんからは、出て来ないはずの言葉。
「すっげー、後悔したんだよ。お前を止めれば良かったって、もっと強引にでも有沢のことを止めていれば良かったって………ずっと思ってた。」
長友くんがそう言って、肩を引き寄せてフワッと私の体を抱き締めた。
久しぶりに感じる、長友くんの体温。
長友くんの温もり。
ギュッと強く、私の体を抱き締める長友くん。
長友くんから伝わる熱が、外気に晒されて冷えきっていた私の体までも温めてくれる。