社内恋愛のススメ




本来なら、隣にいることさえいけないのに。

プロポーズをしてもらえる価値もないのに。


そんな私のことを求めてくれて、ありがとうと。



そう返事をしたかったよ。


でも、それは許されないから。

許されないことだから。



私の返事は決まっていたんだ。

あのプロポーズをされた日から、答えは出ていた。


その答えを口にしたくなかったから、逃げてしまった。

言い出したくないが為に、長友くんの前から消えてしまった。



私が何も答えずに消えたから、長友くんはこうして追いかけて来てくれたんだね。

私が何も答えなかったことが、長友くんを苦しめていた。


だったら、私が言わなくちゃ。


私から、解放してあげるんだ。



縛り付けたくない。

長友くんには長友くんらしく、自由に生きていって欲しい。


笑っていて欲しいんだ。

私が好きになった、あの明るい笑顔で。



「ごめん、長友くん。………私、長友くんとは結婚出来ないよ。」


私のその答えに、背中に回された長友くんの手がわずかに震えたのが分かった。



「なぁ、それ………ほんと?」


ギュッと私を抱き締めたまま、長友くんがそう呟く。


信じたくない。

信じられない。


長友くんのそんな気持ちが伝わってくる。



ああ、私、また長友くんのこと、傷付けてる。


あの時だけじゃない。

私は今もこうして、長友くんのことを傷付けて。

苦しめて、悩ませて。



私じゃ、長友くんのことを幸せに出来ない。

私なんかじゃ、長友くんを笑顔にすることは出来ない。


傷付けても、苦しめても、私は長友くんのプロポーズを受ける訳にはいかないのだ。


受けてはいけないのだ。



< 425 / 464 >

この作品をシェア

pagetop