社内恋愛のススメ
承諾してくれるという保証はない。
自信だってない。
上司として、同僚として慕ってくれていたとしても、男として慕ってくれるかどうかは別問題。
だけど、彼女はこう言ってくれた。
「………。」
「ダメか?」
「全然大丈夫です!」
彼女の言葉。
それだけで、心が躍る自分を改めて感じていた。
約束の日。
ゴールデンウィークのある1日。
彼女が住むというマンションまで迎えに行き、彼女を海辺まで連れ出した。
初めて、彼女を助手席に乗せた。
初めて、ブライベートでの彼女を見ることが出来た。
予想通り。
いや、予想以上だ。
可愛らしい彼女に、すぐに夢中になった。
「好きだよ、実和。」
「………、上条………さん………。」
ずっと好きだった。
離れてから、分かった気持ち。
ようやく気付いた、この気持ち。
好きだ。
君のことが好きなんだ。
誰よりも、君のことが。
想いを告げ合い、彼女を抱いた。
朝まで、一緒に過ごした。
思えば、この頃が1番幸せだったのかもしれない。
狂い始めたのは、いつからだったのだろう。
そうだ。
まだ、彼女と付き合い始めたばかりの頃だ。
突然舞い込んだ、見合い話。
その話は、取引先の社長から。
うちの会社でも、重要視されてる取引先。
そこの会社の社長の娘、小倉 文香。
どこで、彼女に会ったのかは定かではないが。
帰国早々、彼女に一方的に見初められたということらしい。
こっちにしてみれば、いい迷惑以外の何物でもない。
取引先に行くのは、仕事をしたいから。
社長の娘に会いに行きたいからではない。
それなのに、一方的に想いを寄せられて。
父親の力を使って、見合い話にまで発展させて。
考えもつかないことを、文香という女はやってのける。
取引先というのは、厄介なものだ。
平成になった今でも、日本の会社は旧態依然としている部分が多々ある。