社内恋愛のススメ



彼女に対する負い目から出た、言い訳だった。



「君が好きだ。」


本当だよ。

君のことが好きなんだ。


それだけは、はっきり分かっているのに。



「文香よりも、他の誰よりも、君のことを想っている。」


彼女に告げた本心。

それは紛れもなく、真実であったはずの気持ち。


僕の想いが、彼女に届くことはなかった。



「主任には、私よりも素敵な人が似合います。悔しいけど、私よりもあの人の隣にいる方が………主任は幸せになれるんです。」


違うよ。

違うんだ。


君は、何も分かっていない。



僕の幸せは、君の隣にある。

あの女の隣にはないんだ。


どんなに素敵な女性だろうと、君には敵わない。

愛している人には敵わないんだ。



僕が好きなのは、君だ。

愛しているんだ、実和。


そんな悲しい顔をしないで。

そんな虚しい言葉を吐かないで。


お願いだ。



「私も、主任のことが好きでした。ずっとずっと、好きでした。………好きだから、あなたにとって1番いい未来を選びたい。」


僕にとっての、1番いい未来。


それが、君に分かるのか。

君には分かるのか。


そんなもの、自分でもよく分からないのに。




「さようなら、上条さん。私達、上司と部下に戻りましょう………。」


彼女のその言葉が、僕達の短い関係に終止符を打つ言葉となった。


最後に君は、泣きそうな顔で笑った。

今にも泣き出しそうなのに、それでも君は僕の前で笑顔を作った。


その笑顔を、僕は忘れることはないだろう。








文香との結婚。


人生でもそう何度もないはずの、結婚という大きな伏し目となる出来事。

それは、僕の意思を無視する形でどんどん進められていく。



「どう?」


鏡の前で、振り返るのは文香。

真っ白なドレスに身を包んだ、美しき未来の妻。


嬉しそうに微笑む文香を見ても、僕の心は空っぽなまま。



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