社内恋愛のススメ
愛しい彼女。
実和が本社を離れることになったのは、僕との噂が抑えきれないほどに広がってしまったから。
犯人は妻。
会社の至る所へ送り付けられた、ファックス。
僕と実和を中傷する内容のファックス。
それを送り付けたのは、目の前にいる妻。
文香の送り付けたファックスで、実和は本社を離れることになった。
誰からも、見送られることもなく。
愛していたであろう、あの男からも離されて。
実和がいなくなった後、文香は涙ながらに僕に対して謝ってきた。
「ごめ、んなさ………い………っ。仁さん、わ、私、………大変なことを!」
嗚咽を漏らし、泣き崩れる文香。
崩れ落ちて座ってしまった彼女を、僕は追い詰める。
肩をグラグラと揺らし、事の真相を聞き出す。
「どういうことだ?」
「仁さん、ごめんなさい………。」
「文香、説明してくれ。謝っているだけじゃ、何も分からないだろう。」
良心の呵責に耐えきれなくなったのだろう。
実和がいなくなった後、すぐだった。
仕事が終わって帰宅した僕に、文香が泣き付いてきたのは。
謝っている文香よりも、実和のことが気になった。
こんな時でさえ、あの子のことが気になってしまった。
なんて、薄情な男なんだろう。
「あのファックス………、私が流したの。」
あのファックス。
文香のその言葉だけで、分かってしまった。
文香の言うファックスが、どれであるのかを。
僕と実和を中傷するファックス。
陥れる為だけに、わざわざ送られた紙。
部長から見せられたあの白い紙が、記憶の中で蘇る。
実和を支社へと飛ばす原因を作ったのは、妻。
僕と契りを交わしたばかりである、目の前の妻。
それを聞いても、特に驚きはしなかった。