社内恋愛のススメ



「あなたが困るって、分かってた。だけど、どうしても許せなくて………本当にごめんなさい。」


僕が困ると分かっていたクセに、あのファックスを送った。


僕を苦しめる為というよりは、きっと実和を困らせる為。

実和を、僕から引き離す為だけに。



髪を振り乱して、すがる文香。


文香の姿が重なる。

少し前の自分の姿と、今の文香の姿が重なり合う。



僕の前では、文香はいつも完璧な女性だった。


いつでも綺麗で。

いつでも自信に満ちていて。


自分の魅せ方を、知っている女。

自分の魅力を最大限に引き出す方法を、誰よりも分かっている女。



彼女は、こんなにも弱かったのだろうか。

それとも、ここまで弱らせてしまったのは僕なのか。


僕には、彼女を責められない。

突き放すことなんて出来なかった。



「ごめんなさい、ごめんなさい………っ。」

「………もういいんだ、文香。」


文香は、僕に似てるんだ。

だから、僕は文香のことが突き放せない。



手に入らないものを、手に入れようとする。

どんな手を使ってでも、自分のものにしようとする。


自分のものにする為ならば、手段を選ばない。


願いが叶わないなら、壊れてしまえばいいとさえ思っている。



破壊的な衝動。

内に秘めた感情の渦。


激し過ぎるその渦が、僕とよく似ているのだ。



「あなたが………、他の女のものになるなんて………そんなの、耐えられない!」


やっぱり同じだ。

同じなんだ。


ああ、僕もだよ。

僕も、そう思っていた。



実和が、他の男のものになるなんて考えられなかった。

あの男のものになるなんて、耐えられなかった。


許せなかった。

いつまでも、自分のものだと思っていた。


そう、思い込んでいたかったんだ。



だけど、それじゃ、ダメなんだ。


ダメなんだよ。



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