彼女のすべてを知らないけれど
俺は驚き、目を見開いた。
「末代までっ!? 部下に頼んで全国の神社を見守ってるだけでもすごいのに、然の神社まで……。
どうしてそんなに、然の家にこだわるの?」
「我とて、最初は未熟者だった。生まれ持った神としての突出した能力をもてあましていた頃もあってな。使い道を分かっているのに、やる気がせず怠けていたのだ。
そんなところで、偶然、然の先祖と出会った。命守神社の初代神主だった男だ。
人間に姿を見られることをたいして気にしていなかった当時の我は、気まぐれに姿を現し、その辺を散策していたのだ。
すると、初代神主――然の先祖は、我に色々話してくれ、人に尽くすことの喜びや、それで得られる心の豊かさを教えてくれた。
神として、我には人らしい感覚が欠如していたのだが、初代神主はその穴を埋めてくれた。今の我が目的を持ち、自分の存在意義を見失わずにいられるのは彼のおかげだ」
「そうだったんだ。だから今も、然の神社に恩返しをし続けているんだね」
「そういうことだ。然は、昔から危なっかしいヤツだが、お前のことを心から好いている。
我がこんなことを言うのも何だが、これからも然の良き友人でいてやってくれ」