彼女のすべてを知らないけれど
「……そうか。そうかもしれないな」
ミコトはうなずき、玄米茶を一口すすると 、こう切り出した。
「命守流願望成就札があれば、クロムを生き返らせることもできるぞ」
俺は、伏せていた顔を勢いよく上げ、
「えっ……!? クロムを!? だって、クロムはもう、こっちにくる前に死んで……!」
「死んだ時期は関係ない」
「そうなの……?」
食い入るようにミコトを見つめる。
「命守流願望成就札は『どんな願いでもひとつだけ』叶えることができる。必ずな。
むしろ、命に関する願いを叶えるのは我の得意分野。お前が望みさえすれば、今すぐにでもクロムをここに呼ぶことができる。もちろん、生前の姿でな。
また、クロムの死を知る人間の記憶も部分的に修正するから、我の力によってクロムが蘇ったなどとは誰も思わない。お前一人だけが、真実を知るのみ。
亡くなった者を蘇らせる場合、人の記憶を修正する手間がかかるが、お守りの持ち主がそう望むのならば、我は必ずやそれを実現させる。神としての誇りにかけて」
「ミコト……」
ミコトのことが、初めて神に見えた瞬間だった。俺の気持ちは、ミコトと初(はつ)対面した瞬間以上に、激しく揺さぶられる。