ピンキーリング【短編】
「ケーキ屋のおじさんにたのんで、上手くつくるコツを教えてもらったんだ!」
確かに文字はいびつだけど、クリームが上手くぬってあって、デコレーションがキレイで、すごくおいしそうだった。
拓ちゃんあんまり料理上手くないはずなのに、
すごく努力を感じさせる。
「ありがと、拓ちゃん。」
そう言いながら笑うと、拓ちゃんはケーキの上のクッキーを指差した。
「裏、見てみ。」
「……?」
拓ちゃんに言われた通り、クッキーを手にとってみる。
その裏にも、文字がかかれていた。
【ずっとそばにいてください】
そのとき、拓ちゃんがあたしの目の前に指輪を差し出した。
「なな、今は結婚できないけど、結婚ができるときまでの指輪。
ずっとそばにいてください。」
そう言って拓ちゃんがかるく頭を下げる。
あたしは、無意識のうちに涙を流していた。
拓ちゃんがそっと指でぬぐってくれる。
「なんか、海のときみたいだな。」
拓ちゃんが優しく笑った。