密と蜜~命と共に滴り堕ちる大人の恋~
 二時から社内で打ち合わせ。遅刻は私の培ってきたプライドが許さない。

 一本でも早い電車に乗りたい。

「私、先行くから」

 パンケーキ店を出て、走り出した瞬間、右足首が大きく外側に曲がり、そのままアスファルトの上に崩れるように倒れ込んだ。

 私自身は途切れながらブラウン管テレビにゆっくり映し出される一昔前のビデオをスローモーションで見ているようだった。

 テープが乱れ、早送りで痛みがきた。


「痛っ。いたーい」

「鮫島先輩、大丈夫ですか」

 足元を見ると、高いヒールの踵がぶらりと折れていた。無理して履いていたから、足もヒールも『限界だよ』と持ち場を放棄したのだ。



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