密と蜜~命と共に滴り堕ちる大人の恋~
 それにしても石も転がっていない都会の平坦な道で転ぶなんて情けない。しかも、後輩の前で……。

 早く立ち上がろう、そう思う気持ちと反比例するように足首がズキンと唸って立ち上がれない。

「靴、脱いでください」

「平気だから」

「駄目ですよ。脱いでください」

 吉沢くんは拒絶する私の足から少し強引にヒールを脱がせた。

「ちょっと、吉沢くん」

 吉沢くんの視点が一点を見たまま動かない。


「……綺麗な足の裏」


「かっ、からかわないでよ」

 私の足の裏は固くて、営業で歩き回ってきた長年の蓄積が年輪のように厚みをもたらしていた。




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