密と蜜~命と共に滴り堕ちる大人の恋~
 平日の昼間、銀座の有名デパートの前で待ち合わせた。

 雨がしとしと降る中、黒い傘をさした五十代と思われる男性の姿が見えた。ツーショットで話した通り、スーツ姿でドット柄のネクタイをしめている。 

 私も話した通り、淡いブルーのカーディガンと小花柄のスカートを履いて行ったから、お互いがお互いを見て、すぐにはにかんだ。


「マリアさんですよね?」

「はい……」

「初めまして。カトウです」

 二人は恥じらいながら照れくさそうに初めて生で会話を交わした。

 この歳になってやってきた甘酸っぱいラズベリーのような青春の恋。



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