Love the love.


 テルは寝るのを諦めたか、あーあ、と言って起き上がった。そして不機嫌な顔で続ける。

「それに、外に出るときはいつでも決まってあの女が―――――――」

 俺が苦笑するのとほぼ同時に、まるで魔法みたいにテルの玄関のドアが激しく叩かれた。

「・・・ああ・・・」

 正直にうんざりした顔をして、テルはベッドに倒れこむ。

 ドアがバンバンと叩かれて、外からは予想通りの声が聞こえていた。

「ピンクー!!ピンクー!!いるのは判ってるんだからさ!開けなさいよーっ!!」

 ベッドに寝転がったままのテルは微動だにしない。それを目の端で見て、俺は玄関のドアを開けた。

「ピンっ・・・あれ、ハルーっ!?」

 目の前には綺麗な女の子。切れ長で大きな黒い瞳を見開いて、整った顔に大きな笑顔を浮かべた。

 そして―――――――――抱きつこうと突進してきたから、スレスレでそれをかわした。

「おっと」

「あ・・・もう、ハルったら!」

 俺に抱きつき損ねて玄関でふらついた彼女、シンディーが下から膨れっ面を見せる。

「こんにちは、シンディー。テルはまだ寝てるんだ」

 彼女の手から逃げながら、俺は癖でにっこりと微笑んだ。


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