Love the love.
この綺麗で明るくて賑やかな彼女はシンディー・チョウ。台湾系アメリカ人で、父親が成功した金持ちである、正真正銘のセレブだ。
172センチを越す、アジア系の女性にしては長身で、白い肌と大きな黒目をもつスレンダー美人。
一体全体どうしてそんな住む世界が違う女性とテルが知り合いになったのかは、実のところ、よく知らない。
旅先であったとかなんかだったと思う。
まあとにかく、語学習得だとか趣味でやっているモデルの仕事だとかで彼女は日本に居て、こうして度々テルを襲撃しているらしい。
仕事以外は引きこもっているテルが外出するときは、大体このシンディーが係わっている。だからさっき言いかけたのだろう。
オレが外に出るときは、いつでも決まってあの女がいるって。
この、あらゆる意味で目立つお嬢さんが一緒にいるのに、彼女なんて出来るわけがない、そう言いたいのだろう。
「ピンクー!!まだ寝てるの!?起きなよ、お客さんがきてるっていうのに!」
シンディーがまだ俺に手を伸ばしながら、ベッドに寝転ぶテルに向かって叫ぶ。
テルは小学校の頃から、ピンクと呼ばれているのだ。その理由も一度・・・いや数回は聞いたんだけど、何だったか忘れた。
「・・・・うるせーよ、シン。オレが呼んだんじゃないデショ・・・」
もごもごとテルが返す。
言葉でも力でもテルはシンディーに敵わないのに、いつでも言い返すことはするんだよな。そこは、尊敬する。
この外見が美しいお嬢さんは、そこそこ武道を嗜んでもいるのだ。生まれがセレブ故のことらしいけど、一度二人で一緒に犯罪に巻き込まれたことのあるテルは、シンディーの強さをその時にしっかりと見てしまったらしい。