時間の本



20そこらになった少女はもう立派な女性となっておりました。彼女は美しく、聡明な女性でした。彼女の夫となるために男達は争いました。ですが、彼女は多くの男性からの求婚を断って、時間旅行をしては楽しんでおりました。
あるときは海賊と共に海を渡り、あるときは未来のロボットと会話し、またあるときは燕達と空を飛びました。美しい景色を見て、優しい世界に触れて。彼女の人生は、一等星のように輝いておりました。

そうして、空に掛かる虹の綺麗な日のこと。郵便屋さんは彼女にプロポーズをしました。彼女は初めて、首を縦に振りました。
幼なじみの青年も、両親も二人の結婚には反対の意を示しました。何処ぞの骨とも知らぬ輩のところへ嫁にはやれない、と。

二人は住んでいた街を出、野を駆け、星空の果てを目指しました。秋の紅葉が二人の行く手を阻みます。それでも、歩むことはやめませんでした。ある日、二人はきらきらと陽光を降らせる太陽に見守られる小さな家を見つけ、そこに住むことにいたしました。


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