さよならの魔法
心外だとでも言わんばかりに、磯崎さんが笑顔を崩す。
一瞬。
ほんの一瞬見えたのは、狂気に満ちた恐ろしい顔。
「………っ!」
怖い。
怖い。
心が、恐怖という感情だけで支配されていく。
思わず、息を飲む。
磯崎さんの言葉に呼応して、取り巻きの女の子達が騒ぎ出し始めた。
「天宮さんって、そういうこと言う人だったんだー!」
「意外ー、もっと優しい人だと思ってたのに。」
「心配してくれた人に、その言葉はないよね!」
「うん、うん!ないよー!!」
とどめを刺すのは、磯崎さん。
磯崎さんが、私に刃を突き立てる。
深く深く、心の奥にまで刺さる様な言葉の刃を。
「調子に乗んなよ………。」
ああ、今までの偽りの言葉のどれよりも、磯崎さんの今の感情をそのまま素直に表しているかの様な言葉。
ボソッと呟かれた言葉には、磯崎さんの気持ちがどの言葉よりも込められている気がして。
磯崎さんの本心が、そこにある。
偽らざる、彼女の醜い心の内が。
(どうして………なの?)
どうして、放っておいてくれないの?
どうして、私なんかに構うの?
放っておいてよ。
構わないでよ。
いじめられるくらいなら、1人でいた方がずっとマシだよ。
私が、磯崎さんに何をしたの?
磯崎さんが怒り狂うほどの迷惑をかけたの?
そこまでのことを、過去の私は磯崎さんに対してしていたのだろうか。
理由を知りたい。
私がいじめられてしまう、その理由を。
いじめられなければならない、その理由を。
考えを知りたい。
磯崎さんの考えを、磯崎さんの口から聞いてみたい。
何も分からないまま、こうして理不尽な扱いを受け続ける。
その理由は、何なのだろうか。
悲しいよ。
苦しいよ。
心が痛いよ。
私は、人形ではない。
飾られているだけの、感情のない人形なんかじゃない。