偽りの婚約者
話しを聞いて、やっと滝本慎一の策略に両親が引っ掛
かってしまったんだと分かった。
俺がいつ、あいつと親友になったんだ。
ふざけたヤツだ。
なんて卑怯なんだと頭にきたが……あいつを、あっさり信用してしまった両親にも落ち度はある。
とりあえず、返せる額だけでも返そうと連絡をとり、会いに行ったが。
「……貴方のご両親に貸した額には、全然足りませんよ?」
「……そんな事は分かってる。でも今は、これしか返せないんだ」
「今の君は、みすぼらしくて見ていられませんね」
「…くっ……」
「いいですよ?待ちましょう」
どうして、こんなに侮辱されなくては、ならないのか。
なんとも言えない、どす黒い感情が自分の中で渦巻いていた。