偽りの婚約者



そのまま出て、玄関まで行き扉を開けた。
ちょうど帰って来た玲奈と鉢合わせした。
玲奈とは数日前にお互いの幸せを願って別れた……その後に玲奈の家族にこんな仕打ちをされるとは、夢にも思ってなかった。


「雅人!? どうしたの?」


「玲奈……」




『今の君は、みすぼらしくて見ていられませんね』



「っ……!」



さっき滝本慎一に言われた言葉が頭に響いた。



自分と玲奈との間に、隔たりを感じてしまう。



玲奈は何があったのか察したらしく、何かを言いたそうだったけど。
彼女から視線を反らして、そのまま門を出た。



彼女も呼び止める事はしなかった。
卑怯なのは滝本慎一で玲奈が悪いわけではない。
分かってはいるが、このままだと玲奈にまで憎しみをぶつけてしまいそうだ。



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