偽りの婚約者






それから数日経ち、仕事が終わって会社を出ようとした時に携帯電話がかかってきた。


《雅人……!お父さんが、お父さんが倒れてしまって、さっき救急車で病院に―――――》



母からの電話だった。



病院に行って詳しい話しを聞くと昼間、滝本慎一がやって来て、やっぱり残りのお金を1週間以内に返せと言って帰って行った。
滝本慎一が帰った後に具合が悪いと言って寝込んでしまい様子を見に行ったら、父は寝室で倒れていたらしい。



「……先生は過労だろうって」



「大きな病気じゃなくて、良かった」




それにしたって、一度は待ってくれると承諾しておきながら、あいつはどういうつもりなんだ。





滝本慎一に一度会うために、俺は急ぎで病院を後にした。




< 103 / 256 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop