偽りの婚約者
玲奈の家のドアベルを鳴らし、出て来た家政婦を押しのけるように中に入った。
「おいっ!滝本慎一はいるか?」
「先ほど帰ってらっしゃいましたが、ちょっとお待ち下さい……あっ!勝手に入らないで下さい…!」
家政婦には止められたが、構わず目的の部屋に向かった。
勢い良く扉を開けると、滝本慎一は驚いた顔で立ち上がった。
「……東條雅人……何ですか?いきなり……」
「この間、待ってくれるって言ったよな?なのに、また急に返せって両親に言ったんだってな」
「確かに言いましたが……待てなくなったんだから仕方ないでしょう?」
滝本慎一はニヤリと嫌な笑みを浮かべた。
「お前……まさか最初からそのつもりで……」