偽りの婚約者




「だから髪に虫がとまってて、主任が見付けたんですけど、私、虫が苦手で触れないから取って貰っただけです」



「虫……なのか。
なんだよ、本当にそれだけなら。俺……ばかみたいだろう」


「東條さん?」




「千夏、余計な心配させるな」


「心配……したんですか?」



「あぁ、凄く心配した。本当にお前は危なっかしいな」



腕を引かれてバランスを崩し東條さんの腕のなかに倒れた。


ギュウッと抱きしめられ。
低くかすれた東條さんの声が耳元で聞こえた。


「千夏は、俺だけを見ていればいいんだ」


私は東條さんしか見てないよ、そう言いたかったのに直ぐに唇を塞がれ何も言えなくなってしまった。

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