偽りの婚約者
私も手を出して軽く握手をした。
「あっ、動かないで!」
「なんですか?」
「なんか、小さい虫が頭にとまってるよ」
嘘っ、虫が頭にって……私、虫触れないのにぃ……!!
「わぁぁっ!!虫!!
やだ、主任早く取って下さいっ!私、虫って苦手なんです……っ!」
「じゃあ大人しく……っと、はい、取れたよ」
主任はつまんだものを私に見せようとしてきた。
「ひっ、やだーっ……!もうっ、見せないで下さいよ!」
「ははっ、悪い悪い」
急に目の前に現れた東條さんに驚いた。
「東條さん!」
東條さんはガシッと私の腕を強くつかんで歩きだした。
主任がまた月曜日にと言ったから、お先に失礼しますと言おうとしたけど最後まで言えずにその場を離れた。
車まで来るとパッと手を離されてよろめきそうになった。
「と……東條さん?」
「……お前さぁ、何で主任に髪なんて触らせてるんだ」
東條さんは誤解している。
「あのっ、虫なんです」
「は?……虫?」
東條さんは、わけが分からないって顔になった。