偽りの婚約者


「それ、千夏の腕時計じゃねぇな?誰のだ」



「……ねぇ一緒にいてほしいのは本当に私なのかな……?それとも紗季さんなの?」



「紗季?いったい、何だって言うんだ。
わけが分からねぇ……」


「知らないなんて、おかしいです。
経理課で一緒だった中島紗季さんの事です。
東條さんもうちの課にいたんだから紗季さんを知っているはずです」



「玲奈の友達か」



「ここに来たんでしょ?」



「玲奈の友達と付き合いはない。
良く考えろ、ここにくる訳はないだろう」



「東條さんの嘘つきっ!! 紗季さんを抱いたくせに……」



腹立ちまぎれに手の中の物を彼に向けて投げつけた。


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