偽りの婚約者
「母さん、父さんの具合はどうだ?」
「今日はだいぶ、良いみたい。
雅人が彼女を連れて来るって言ってたから、楽しみにしていたのよ」
振り向いた彼のお母さんと挨拶を交わした。
「貴女が千夏さん?」
「は、はいっ!初めまして安西千夏です」
「あなた……、千夏さんが来てくれましたよ」
東條さんのお父さんが読んでいた本を閉じて、私を見た。
「あの……初めましてっ、安西千夏です」
「……良く、来てくれましたね。
雅人から結婚を考えている人がいると聞いて、貴女に会いたかったんですよ」